Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【川島章良さんのケース】腎臓がん 8割は完治する可能性あり

川島章良さん(左)/(C)日刊ゲンダイ

 あくまで推測ですが、腎臓がんを発症したのは、遺伝の影響があるかもしれません。

 ヒトは両親から一つずつの遺伝子を受け継ぎ、いろいろな役割を担っています。がん発症との兼ね合いで重要なのは、発症を抑えようとする「がん抑制遺伝子」です。生まれつきどちらかの遺伝子が突然変異していて、生活の途中でもう片方にキズがつくと、がんを抑える働きがストップ。がんにかかりやすくなるのです。

 遺伝的な要因があると、腎臓や中枢神経に腫瘍が多発する傾向があり、こうした方の4割近くが腎臓がんを発症するとされています。一般的な腎臓がんの発症は55歳以上なのに対し、このタイプの腎臓がん発症年齢は平均38歳と若く、2つの腎臓の両方にできやすいのが特徴。10代で発症するケースもあります。

 遺伝子異常は検査で分かりますから、若くしてがんになった人が近縁者にいる家系の方は、若いうちからがん検診を受けることが大切です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。