まだ多い誤解…医師指南「コレステロール」の正しい知識

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日本では狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの心血管病が死因の第2位を占める。心血管病は動脈硬化の進行によって引き起こされるが、日本はEUと比べて、動脈硬化と深い関係にあるコレステロールに対して知識が不足していることが、製薬会社「サノフィ」の意識調査で明らかになった。心血管病回避に必須のコレステロールの知識は何か? 東京慈恵会医科大学付属病院糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也医師に聞いた。

①悪玉は悪者?

「悪玉」はLDLコレステロール(以下LDL-C)、「善玉」はHDLコレステロール(同HDL-C)。

「コレステロールの量が多くなると血管内壁に蓄積され、LDL-Cが酸化LDL-Cに変わり、やがて動脈硬化が進行します」

 コレステロールは細胞膜の重要な構成成分だ。LDL-Cはこのコレステロールを体の隅々に運ぶ役割を担っていて、生きていく上で欠かせない。悪者は酸化LDL-Cなのだ。

 ただ、酸化LDLをダイレクトに見る指標が少なく、一般診療では測定が難しい。そのため、LDL-Cが基準値を超えると動脈硬化のリスクが高い脂質異常症とされる。やはり、LDL-Cは下げた方がいい。なお、「HDL-Cが低い」「中性脂肪が高い」のいずれかに該当する場合も脂質異常症となる。

②善玉は高くても問題ない?

 低HDL-Cは脂質異常症の条件だが、一方で、高HDL-C(120mg/dl以上)も問題だ。

「HDL-Cが高い人も心血管病で亡くなる割合が多い。私の外来にも高HDLの患者さんがいらしていますが、高LDL-Cとは違い、高HDL-Cはほとんど治療法がありません」

 適時、動脈硬化の検査を行い、進行している場合は動脈硬化を悪化させない生活改善を心掛け、場合によっては投薬治療を受ける。

③コレステロールが高い方が長生きという説もあるが、真相は?

「現在は一般的ではありません。衰弱や疾患で栄養状態が悪ければ、コレステロールが低くなり寿命が短くなる。こういった例が統計に入り、『高コレステロールの方が長生きだ』という説になったのでしょう」

④食生活の改善や運動は有効?

「それらではLDL-Cの数値が下がりにくい。LDL-Cが高い場合、体質も関係しているからです。食生活の改善や運動をやってみて、数カ月続けても数値が下がらなければ、薬物治療をスタートすべき。薬には副作用があるものの、異常高値、家系に心臓脳疾患の方がいる方はメリットとデメリットを考慮すれば、薬物治療によるメリットの方が大きいです」

⑤何を食べてもいい?

「食事内容とLDL-Cは関係が薄いといわれています。しかし一部には、卵など高コレステロールの食品の過剰摂取でLDL-Cが上昇する人もいます。体重と相関することも報告されています。だから、ある程度の食の管理は欠かせません」

⑥薬で数値は下がる?

「従来薬では目標値まで下がらない人がいました。しかし、今年初めに脂質異常症の新薬が登場。従来薬とメカニズムが違い、副作用も少ないので、今後は期待できます」

⑦数値が下がれば薬をやめられる?

 残念ながら、これも難しい。前述のとおり体質が関係しているため、薬をやめると数値が上がる可能性がある。

「さらに最近、LDL-Cの数値の変動が大きいほど心血管病のリスクを高めると判明しました。季節によってもLDL-Cは上下する。適切な薬をしっかり飲み、数値のコントロールに努めることが心血管病予防では重要です」

⑧季節ごとのコレステロール対策注意点は?

 忘年会や新年会が重なる年末から年始にかけては数値が高くなりやすい。「脱暴飲暴食」の留意は当然だが、もっと必要なことがある。

「健康診断は大抵春から初夏なので年末年始に数値が高くなっていることを知らない人が結構います。自分のLDL-C、HDL-C、そして中性脂肪は本当に基準値以内なのか、1年を通してチェックしたほうがいい」

 特に肥満、高血圧、高血糖など生活習慣病を抱えている人は、春と秋の2回はコレステロールの検査を受けよう。

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