看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

がんの3大治療の一つ「抗がん剤」 手で触っても問題ない?

通常の薬は手で触っても差し支えはないが…
通常の薬は手で触っても差し支えはないが…(C)日刊ゲンダイ

 今回は、がんの3大治療のひとつ、抗がん剤についてのお話です。

 ここ数年、医療関係者の間で注目されているのが「抗がん剤の曝露対策」です。先日行われた日本がん看護学会学術集会でも、シンポジウムやセミナーが多数開催されていました。

 がん薬物療法に使用される抗がん剤は、細胞の増殖を抑制し、治療薬として効果を挙げる半面、正常な細胞に対する毒性を有しており、発がん性や催奇形性などの影響があるといわれています。

 抗がん剤は内服や点滴、注射で投与されることが多いですが、たとえばそれが意図せず揮発し、人が空気と一緒に吸入したり、直接手で触ってしまうことで危険にさらされることを「曝露」といいます。

 特に薬剤師や看護師は、抗がん剤を調製する際や、患者さんに投与する際など抗がん剤を取り扱う機会が多い。欧米では以前から危険性が指摘されていましたが、日本でもようやくここ数年、抗がん剤の曝露への対策が検討されるようになってきました。

 抗がん剤の曝露に関しては、私たち医療者だけでなく、実際に抗がん剤治療を受けている患者さんやそのご家族にも知っておいてもらいたいことがあります。抗がん剤は一部の薬剤を除き、投与後おおよそ2日間は、尿や便などの排泄物に抗がん剤の成分が残るとされています。つまり、抗がん剤の投与を受けている患者さんは、トイレ後、しっかりと手洗いをすることが大切です。

 また、万が一、嘔吐物や排泄物などで衣類などが汚染した場合には、患者さんもご家族も処理の際には直接手を触れないようにしてください。手袋を着用したり、汚れたものは二度洗いするなどが必要です。

 現在は、各病院で抗がん剤の曝露に対する取り組みがされています。がん看護専門看護師らに、「抗がん剤の曝露について、私や家族が注意すべき点はどのようなことですか?」と尋ねてみるとよいでしょう。