薬に頼らないこころの健康法Q&A

疲労感受センサーが損壊 被災者の“予想外の元気”に要注意

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

■睡眠と休息は不可欠

 あなたが被災した身内や知人にお電話される際、必ず聞いていただきたいことがあります。それは「ちゃんと眠れていますか?」ということです。

 もし「眠っていない。眠らなくても大丈夫だ」、そのような言葉が返ってきたら要注意です。どうか、愛情を込めて、こう伝えてください。「眠らないとダウンする。無理してでも夜は休まなければいけない。明日でもできることは、明日に回しましょう」と。

 睡眠は災害時には普段以上に取らなくてはなりません。睡眠は、脳や体の疲れを取るだけでなく、ストレスに対する抵抗力を向上させ、免疫力を高めます。過活動によりオーバーペースになっている心臓を休ませ、記憶の内容を整理し、判断力を回復することもできるのです。

 逆にいえば、睡眠不足はストレスに対する抵抗力を損ない、病気にかかりやすくします。脳のスタミナを損ない、思考力も落ちて、結果として判断ミスを連発してしまう恐れもあります。

 震災からの復興は、マラソンです。無呼吸で一気に走りきる100メートル競走ではありせん。息の長い活動が必要です。今はまだ、ほんの始まりです。明日のために、夜は早く休むこと。明るくなったらまた活動を再開しましょう。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。