医療数字のカラクリ

治験データ解析不足で副作用 日本の臨床試験での“大事件”

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 しかし、その後には「直接の原因は不明であった」とし、論文の結論として「高い安全性が確認された」とあります。

 さらに、事件が起きた後の調査で、2人の死亡が確認されました。動物実験でソリブジンと抗がん剤の相互作用による実験動物の死亡を示すデータが明らかになるなど、情報が公開されたのです。

 もし、この情報が十分吟味されていれば、副作用は防ぐことができたものだったことが明らかになります。

「メーカーはデータを隠蔽しているかもしれず、治験の死亡例はまず副作用を疑え」─―。肝に銘じたいものです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。