当事者たちが明かす「医療のウラ側」

環境変化で症状悪化も 糖尿病患者が避難所で注意すべき点

意識して水分を摂ること
意識して水分を摂ること(C)日刊ゲンダイ
都内の40代勤務医

 熊本を中心とした九州の大地震で、大勢の人が避難所暮らしを余儀なくされています。中でも糖尿病患者の方が心配でなりません。環境の変化から症状を悪化させているのではないでしょうか。

 避難所暮らしというと、食事も十分でないようなイメージを持たれる方もおられるでしょうが、東日本大震災では必ずしもそうではなかったケースもあるようです。

■体重増になる人も

 私の友人はボランティア医師として現地に入り、医療活動を行いましたが、彼のいた避難所では救援物資が全国から届き、数キロ体重が増えたという人もいたそうです。避難所では、おにぎり、菓子パン、カップ麺、野菜ジュースなどカロリーが高いものが出てきます。不足するのはビタミンやミネラルですが、これらを補給するのは難しいかもしれません。そのため、食事のバランスが崩れて太ってしまうのです。

 こうした食生活は自宅での被災でも同じです。コンビニやスーパーで日持ちする食料品を大量買いしている人も、食べているものは避難所と大差ありません。

 また避難所では運動不足は免れません。よく眠れないことも体重増に拍車をかけることになります。

 むろん避難所生活が長引くと、持病の薬を切らしてしまい、治療を中断することになります。

 では、被災地にいる糖尿病の友人・知人、肉親にはどういう声掛けをしたらよいのでしょうか? 現地の医療スタッフに「自分は糖尿病です」と告げて、アドバイスをもらうよう伝えることが大切ですが、それが無理なケースでは、まず水分を多めに取ることです。避難所暮らしではトイレを考えて、なるべく水を取らないという人がいますが、考えを改めるよう伝えてください。

 避難所で出される食事は水分が少ない菓子パンなどが多く、普段通り水分を取っているつもりでも1日トータルの水分は少なくなります。そうなると、血糖値が上がり、血管が詰まりやすくなったり、腎臓が悪くなったりします。

 さらに被災地では感染症にかかりやすくなります。とくに高温多湿の九州ではその心配があります。その備えをするよう伝えるのも大切です。感染症で発熱や食欲不振に陥ると、食物がのどを通らなくなり、「シックデー」という状態になります。