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技術的には可能に ブタで移植用臓器を作る再生医療の未来

 同じように腎臓や肝臓を作れないブタの胚を作り、ヒトの万能細胞を注入すれば、ヒトに移植できる臓器(ヒトの細胞でできた臓器)が簡単に手に入るようになるはずです。適当な大きさまで子ブタを育て、そこから臓器を取り出して、人間の患者に移植するだけです。ちょっと恐ろしい話ですが、これが近未来の再生医療の姿です。

 ヒトの万能細胞を使った動物性集合胚の研究は、日本を含む多くの国々で厳しく規制されてきました。しかし、移植用臓器の需要が逼迫していることや、大きなビジネスチャンスに結びつくことから、次第に規制が緩められてきています。日本でも、2013年には規制が事実上撤廃されました。

 この方法を使えば、オーダーメードの臓器を作ることも可能です。患者から採取した万能細胞を使って、腎臓や肝臓を作れるのです。ただし、子ブタが誕生して成長するまでの期間、待てるかどうかがネックになります。また「既製品」として臓器を製造する場合は、誰の万能細胞を使うかが問題になりそうです。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。