問題はそれだけではない。気になる国民健康保険の保険料率が、住民の代表たる議会抜きで決められる、ということだ。
「従来の保険料率は市町村議会で議論され承認を経ていました。それが2018年からは、議会のチェック抜きで都道府県が保険者代表や保険医、公益代表など形だけの運営協議会で議論し、市町村長の承認を得るという形になったのです」
この意味は重大だ。これまで各市町村は、国保の赤字分は議会の承認が必要な一般会計部分から繰り入れて補填してきた。つまり、なんとかやりくりし、各市町村の許容範囲でギリギリ市民が払える額を算定していたのだ。ところが、“議会承認抜き”となると、他の一般会計からの繰り入れがきわめて難しくなる。当然、保険加入者の負担が増え、保険料はアップ。それが払えず、無保険者が続出する事態になりかねない。
そもそも、国保は自営業者や農漁業者救済のシステムとして設立された。ところが、今の国保加入者の構成比率は無職が4割、非正規労働者が4割。こういう人たちの保険料はいくらが妥当なのか、想定していない。彼らにとって妥当でない保険料だからこそ、滞納が増えているのだ。日本総研の西沢和彦・上席主任研究員が言う。
「今の国保制度は子供が多い世帯ほど高くなるなど、支払い能力に応じた現実的な制度とは言い難い。それを改めずに運営主体だけ代えても解決になりません。いまは現実に即した適正な保険料の算出方法を考え、抜本的改革を目指すことが先決です」
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