震災後の健康被害 これからが危ない

<第1回>口腔ケアなしで肺炎、寝たきり、認知症は防げない

水が不足でも口腔ケアが重要
水が不足でも口腔ケアが重要(C)日刊ゲンダイ

 最初の大きな揺れから11日目。被災地では揺れが落ち着いてきて、「少し安心した」という人も多いはず。しかし、震災の影響が心身に及ぶのはこれからが本番。その対処の仕方次第で健康に生きられるかどうかが決まる。まず気をつけなければならないのが口腔内のトラブルだ。八重洲歯科クリニック(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。

「阪神・淡路大震災後では、多くの被災者が肺炎で亡くなったことがわかっています。その主な原因は高齢者で口の中に繁殖した細菌が唾液などと共に気管に入る、誤嚥性肺炎でした」

 1995年に発生したこの大震災で亡くなった人は6434人。そのうち5512人が建物の倒壊による圧死や窒息死で、残り922人のうち223人が肺炎で亡くなったとみられている。

「その教訓から、被災地では早い時期から口腔ケアチームが入り、対応しています。しかし、十分とはいえないので、自分自身で守るしかありません。歯磨きできる人は面倒くさがらずにしっかり行う。水が不足気味なら、デンタルティッシュ、シュガーレスガムなどで口腔ケアを心がけることです」

■柔らかい食べ物で唾液減少

 東日本大震災では、わずか数週間の避難所暮らしで、口の中が虫歯だらけになった人も多かった。

「被災地では、保存が利き、糖分が多い菓子パンやアメなど、軟らかい食べ物が配られます。これだと、少ない回数で噛んでのみこめるからです。しかし、そのせいで唾液が減り、口の中の汚れが落とせず、虫歯になってしまうのです」

 被災地では、一日中続く余震や避難所のストレスが口腔内のダメージの原因になる場合もある。

「そのせいで口内炎ができたり、歯周病が悪化する人も少なくありません。中には、ストレスで知らず知らずのうちに“食いしばり”が起き、歯の一部が欠けたり、割れたりしている方もいます」

 入れ歯を利用している人は虫歯にはとくに注意したい。

「部分入れ歯をしている人は入れ歯を支えている歯が虫歯になると、入れ歯そのものをやり直さなければなりません」

 震災で入れ歯を失った人は早急に作り直すことが必要だ。入れ歯なしの状態を続けると寝たきりになるケースがある。

「入れ歯を失ったままだと、食事が満足にできず、言葉がはっきりしゃべれなくなるだけではありません。歯がないと全身に力が入らなくなる。その結果、起き上がることができずに寝たきりになることがあるようです。震災後、入れ歯が合わず使わなくなった人も含めて、入れ歯の人は早急に作り直す必要があります」

 被災した親族や友人にしっかり伝えたい。