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【膝関節の自家培養軟骨移植】鎌ケ谷総合病院/整形外科リウマチ科(千葉県鎌ケ谷市)

鎌ケ谷総合病院/整形外科リウマチ科の望月猛副院長
鎌ケ谷総合病院/整形外科リウマチ科の望月猛副院長(提供写真)
膝軟骨トラブルの新解決法「3つのメリット」

 整形外科の再生医療の一つ「自家培養軟骨移植」。2013年4月から膝関節の治療で保険適用になったが、厚労省の使用認定が必要になるため、実施できる病院は3月末現在、全国でも218施設と限られる。

 全国で4例以上実施している病院は15施設ほどしかなく、同院は関節疾患に強く、積極的に取り組んでいる施設の一つだ。

 膝関節のどんな病気の治療で行われるのか。同科の望月猛副院長が言う。

「対象になるのは『外傷性軟骨欠損症』と『離断性骨軟骨炎』で、軟骨の欠損面積が4平方センチ以上ある患者さんです。治癒率には年齢も関係してくるので、適応はおおむね50歳以下になります」

 外傷性軟骨欠損症は、スポーツや交通事故などの強い衝撃により、膝の軟骨の一部が欠けてしまう外傷。離断性骨軟骨炎は、激しいスポーツで膝に繰り返し力が加わることで軟骨がはがれてしまうスポーツ障害だ。どちらも膝に痛みが表れる。

 これまで軟骨の欠損の治療は、「骨軟骨移植法」が行われてきた。体重のかからない膝の他の部分の軟骨と骨の一部を直径5~10ミリの円柱状に採取し、一つ一つ欠損部に埋めていく移植法だ。

 欠損が広範囲になると侵襲も大きく、対応が難しい。移植部分がきれいに埋まらず、隙間ができると再受傷しやすいなどの問題があった。さらに従来の移植法の軟骨の生着率は、年齢が上がるにつれて悪くなる。

■入院は3~5日で1週間後に抜糸

「これらの欠点を補えるのが自家培養軟骨移植です。少量の軟骨を採取するだけで大量に培養できる。0.4グラムの軟骨から直径25ミリ(面積約5平方センチ)の円状シートが3個できます。これだけあると、膝に体重がかかる軟骨表面積をすべてカバーできる量になります」
 関節鏡を使って、実際の治療では念のため0.4~0.5グラムの軟骨を採取する。培養期間は4週間。その後、従来の移植と同じように膝を切開して、培養した軟骨シートを欠損部分に縫いつける。入院は3~5日で、1週間後に抜糸になる。

「従来の移植法では、円柱状の軟骨を一つ一つ移植するので、移植部分の表面がでこぼこして摩擦が大きい。しかし、培養移植はシートの表面が滑らかなので、術後に痛みや再受傷が起こりにくいのです。生着率も高く、臨床データでは90%以上とされています」

 適応を50歳以下にしているのは、松葉杖の生活ができる年代でないと治療が難しいからだ。術後4~6週間は手術した膝に体重がかけられない。術後、半年~1年のリハビリ期間を経て、スポーツへの復帰ができるようになるという。患者負担は高額療養費制度が適用される。

「どの年代であっても、膝痛を解決するために最善の治療を提供します。将来的に医療技術が進歩すれば、変形性膝関節症などの膝疾患にも保険適用が拡大されるかもしれません」

【データ】
社会医療法人社団木下会が2007年開院。
◆スタッフ数=常勤医師5人
◆2015年度:初診患者数=1758人、総手術数=1296件
◆自家培養軟骨移植の実施数(2016年2月~)=2例