独白 愉快な“病人”たち

エッセイスト・岸本葉子さん(54)虫垂がん

岸本葉子さん(C)日刊ゲンダイ

■入院中は医師の説明などをメモ

 独り身で付き添いもいないので、入院準備の買い出しも必要でしたし、ゆっくり落ち込む暇もなく入院生活に突入。手術は、虫垂のほか隣接転移したS状結腸の一部、その周りの腹膜の切除で、全身麻酔の開腹手術でした。目覚めた後は、人工呼吸器を付けていた喉と腹部の傷が痛かった。でも、翌々日にはもう「歩いてください」って。

 入院生活も暇ではなかったです。入院中は見たことや考えたこと、先生の話など、とにかくいろんなことをメモしました。状況を整理し、分かったことを確認して安心材料にするためです。

 たとえば、痛い状況ひとつとっても「なぜ痛いか」「そのためにこう対処しているから大丈夫」といったことが分かると、たとえ痛み自体は変わらなくても恐怖心は軽くなるんです。それと、入院中は週ごとに目標を立てていました。第1週から「適応」「手術を乗り越える」「リハビリ」「社会復帰」の4週間分です。目の前の目標をコツコツこなすことも、ひとつの不安解消法。病院でボーッとしていると大抵、悪いことばかり考えてしまいますからね。

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