医療数字のカラクリ

帯状疱疹の治療薬「ソリブジン」 本当の効果を検証する

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 帯状疱疹の治療薬「ソリブジン」は抗がん剤との併用により多くの患者の死亡を引き起こし、発売後間もなく市場から姿を消しました。今回はその効果について考えてみましょう。この薬は抗がん剤の併用さえなければ、安全で効果の高い薬だったかもしれないからです。

 そのために注目したのが前回同様、第2相臨床試験の治験として行われた実験です。

 226人の帯状疱疹の患者さんに対し、プラセボ(偽薬)を対照として1日の薬の投与量が「30ミリグラム」「150ミリグラム」「300ミリグラム」の3グループの効果を、投与終了時の7日目と、試験終了時の3週間目で比較・検討しています。

 その結果も意外なものでした。1週間のソリブジン投与直後において、疼痛の消失率はプラセボ群で16.7%に対し、30ミリグラム群で30.8%、150ミリグラム群で40.0%、300ミリグラム群で30.8%とソリブジン群で高い傾向にあります。

 それに対し、3週間後ではプラセボ群でも58.3%で疼痛が消失、30ミリグラム群の63.5%、150ミリグラム群の78.2%、300ミリグラム群の59.6%と、ほとんど差がないという結果になっています。

「早期には効果が認められるものの、最終的にはほとんど差がない」という結果ですから、前回示した治験参加者1人の死亡が、もし薬剤と関係しているとすれば大変なことです。実際に保険薬として認可する前に、ここで治験そのものの中止を検討すべき結果のようにも思えます。治験を続けるとしても、前回の試験での1人の死亡が本当に薬の影響でないかどうか、徹底的に吟味される必要があるでしょう。

 この事件は、保険薬として使われるまでの治験のデータがその都度、広く公表される必要を示していると思います。しかし、残念ながらその公表は義務付けられてはいません。ここにも大きな問題が放置されたままになっています。