天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

ゆとり世代 高齢者とは異なるリスクを抱える

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

■病気の発症の仕方にも変化

 さらに、生活習慣が大きく変わった70代以上の世代と若い世代では、病気の発症の仕方も変わってきているといえます。いまの高齢の世代が若かった頃には見られなかったような病気が若い世代に増えています。たとえば、かつては若い世代には少なかった変性性の心臓弁膜症や解離性大動脈瘤といった病気を、若くして発症するケースが増えてきているのです。

 若い世代は、心臓のつくりが全体的に脆弱になっているのも特徴といえるでしょう。食べ物が豊富で栄養状態がよくなった分、体のつくりは大きくなっています。しかし、昔に比べると日常生活の中から運動量が落ちているため、鍛えられないままひょろひょろと大きくなっている傾向が強い。そのため、体の成長に心臓のつくりが追いついていない印象です。

 心臓の大きさは、病気がなければ成人する頃まではどんな人でもだいたい同程度です。しかし、その後の心臓の成長は、体が成長する過程における生活環境の違いによって変わってきます。心筋の強さ、組織の脆弱さ、不整脈が起こりやすいか否か……心臓が病気しやすい方向に成長するのか、そうでないかは、食事や睡眠などの生活習慣が大きく左右するのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。