震災後の健康被害 これからが危ない

<第4回>初期症状は空腹時や食後の痛み 「震災胃潰瘍」に要注意

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 熊本では震度7の2回を含め、震度1以上の揺れが900回を超えた。その強いストレスが原因で胃や腸に信じられないような病変が起こるケースが多発するという。東京都医師会の理事で「鳥居内科クリニック」(世田谷区)の鳥居明院長(消化器内科)が言う。

「過去の震災でも地震への恐怖心が強いストレスとなって急性胃粘膜病変(AGLM)が多数発症したことが報告されています」

 強烈なストレスが胃に潰瘍を引き起こす例はラットによる過去の動物実験でも証明されている。AGLMの最初の症状は空腹時や食事後の上腹部痛から始まる。この時点で内視鏡検査すると胃や十二指腸に多くの急性潰瘍、びらんが発見される。

 健康な胃は胃酸から胃壁を守るため、胃粘液を分泌して胃壁の表面を守っている。強いストレスなどで自律神経が乱れると胃粘液と胃酸のバランスが崩れ、胃酸が多くなり、胃の粘膜を急激に痛め荒らすのだ。この状態を放置しておくと、潰瘍部分の血管が破れる出血性潰瘍となり痛みとともに吐血、下血を引き起こす。最悪の場合、胃に穴が開いて、腹膜炎を引き起こし、死に至るケースさえあるという。

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