Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【村田喜代子さんのケース】子宮体がん 標準治療の手術を拒否する選択

村田喜代子さんのケース(C)日刊ゲンダイ

 村田さんの「がん友達」で、昨年乳がんで亡くなられた直木賞作家の杉本章子さん(享年62)も、がんの治療をほとんど受けなかったことが話題になりました。

 杉本さんは幼いころに小児麻痺を患い、亡くなるまで松葉杖が手放せませんでした。「松葉杖を脇で挟めなくなるのは困る」と手術を拒否。わずかな間でも書けなくなることを恐れて抗がん剤治療も断ったそうです。執筆しながらご両親の介護もされていて、介護ができなくなることを恐れたのも、手術や抗がん剤を拒否した理由と伝えられています。

 村田さんの作品には、がんで放射線治療を受ける妻の姿を夫の視線で描いた「光線」や、放射線治療でがんが消えた妻が夫と一緒に南国の海岸を歩く「原子海岸」といった短編作品もあり、患者さんががんと向き合う上で参考になるかもしれません。

 おふたりとも、治療法選択の軸に据えたのは、自分や家族との生活です。ぜひ、読者の皆さんも参考にしてみてください。

3 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。