健康は住まいがつくる

「子供部屋」の在り方 成長に合わせ親子で部屋替えが必要

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 住環境が子供の発育や発達に、どう影響するのか。よく引き合いに出されるのが「子供部屋」の在り方だ。

 早い時期から与えた方が勉強をよくするのか、頭がよくなるのか。それとも個室があるから、引きこもりになったり、非行に走るのか。また、そもそも居住スペースにそんな余裕のない家庭も多い。

 環境行動学、環境心理学を専門とする東京電機大学・未来科学部建築学科の山田あすか准教授(博士〈工学〉)が言う。

「一般的には、子供部屋があっても、家族の共有スペースから部屋への出入りや部屋での様子が感じ取れる間取りが推奨されています。偏差値の高い最難関中学校に合格した子供たちの家の間取りと暮らしぶりを調べた研究報告も出されています。そのような家に共通するのは、子供が1人にならない状況がつくられている特徴があり、親と子供が同じ本棚を使うなど、親子が一緒に話したり、興味を共有できる住環境であることです」

 日本の2LDKや3LDKのマンション型の家では、玄関に入ると縦に廊下があり、そのサイドに個室、廊下の突き当たりにリビングダイニングがあるような「廊下型」の間取りが多い。子供が小さいうちは、家族が共有するリビングダイニングの一角で勉強させるようなスタイルの方が学校の成績が伸びる傾向があるという。

■親子が自然に関わる状況をつくることが重要

「小学生くらいまでは自分1人だけでは勉強しにくく、親がそばにいれば勉強を見てあげられます。本棚を共有すれば、親が子供の興味を知ることができます。結局、『頭がいい』とは、距離の取り方を含めて他人との関わりが上手にできるかどうか。親子が自然に関わる状況をつくることで、他人の話を聞き、理解して、議論するなどの能力が育まれるのだと考えられます」

 ただし、過干渉な性格の親が“過干渉になりやすいタイプの家”に住むと、子供の成長に伴って逆に親子間のコミュニケーションが悪くなる場合もある。廊下に隣接する個室と、リビングダイニング(共有スペース)を通って入る個室があるような場合、後者を子供部屋にしているなら要注意だ。

 山田准教授らの調査では、前者で育った人よりも後者で育った人の方が、親とのコミュニケーションがうまくいってなかったと考える割合が高かったという。

「後者では、子供から見た親との関わりの選択ができなくなってしまうのです。いつでも家族に帰属させられていて、親の都合で関わりを強要されていると一度思ってしまうと逃げ場がないのです」

 このような場合には、子供の成長に合わせて親と子供の部屋替えをするなどの工夫をした方がいいという。

 親子関係は千差万別なので、すべての家庭に当てはまると言えないが、参考にしてはどうか。