「よそ者に心の中を打ち明けて、何の意味があるのか」
そのように被災者が思ったとしても、それは無理もなかったのです。
震災後、被災者たちの心身の健康を支援することは必要です。しかし、「心のケア」の虚実の乖離は認識しなければなりません。「心のケア」とは一種の「行政用語」「マスコミ用語」であり、現場で求められることは、言葉でイメージされるような「お悩み相談」ではありません。
阪神・淡路、東日本大震災などの支援を通じて、精神保健従事者は災害精神医学の実践知を蓄積しています。このようなことから、被災者の被害体験に触れるような「心のケア」は、かえって有害だと認識しています。
それでは、精神保健ボランティアたちは、今、現地で何をしているのか。それは、地震直後にあっては、地域の保健資源の現状把握と被災者のプライバシーの尊重、心の持病を悪化させないための薬剤供給の確保でした。
薬に頼らないこころの健康法Q&A