独白 愉快な“病人”たち

元ラグビーA日本代表・酒井宏之さん(43)精巣がん

中大ラグビー部のヘッドコーチを務める(C)日刊ゲンダイ

 その頃は相当鍛えていて裸のモデルもやっていたし、ラグビー部のノリで酒の席でよく脱ぐので、「傷が痛々しいのも困るな」なんて軽く考えていたんです。

 ところが、僕のがんは転移はしてないけど悪性。急を要するもので、術後の抗がん剤治療もマストとのことでした。結局、「腰のヘルニア」ということにして、急きょ舞台を降板しました。実は、こうやって人前で話すのも今回が初めてなんです。

 手術中は、亡くなった生沼とひたすら走る夢を見ました。彼が「つらいっすね」と言いながら一緒に走ってくれる。まるで、僕を励ましてくれるような夢でした。きっとヤツが助けてくれたんだと思います。

■35~36歳は試練の時期

 それより、大変だったのは術後です。16日1クールで計3回の抗がん剤投与がキツかった。当時は「筋肉番付」などのアスリート番組に出演していたので、入院中に体を絞ろうと筋トレの器具を持ち込んだものの、まったく無理!

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