医療数字のカラクリ

動物実験に治験 数々のステップも事件の歯止めにならない

 帯状疱疹治療薬「ソリブジン」は、第1相臨床試験において健常者での安全性が確かめられたあと、初期第2相臨床試験で帯状疱疹患者を対象として1人の死亡者を出しました。にもかかわらず、ソリブジンと死亡の因果関係不明のまま放置され、臨床試験が続けられました。

 そのあと後期第2相臨床試験が行われましたが、治療効果について偽薬と明確な差が出ませんでした。ところが、続く第3相臨床試験で「有効」「安全」とされ、保険薬として臨床の現場で抗がん剤を使っている患者の帯状疱疹に投与され、多くの死亡者を出すこととなりました。これが「ソリブジン事件」の事後的に確認できる大ざっぱな流れです。

 しかし、治験段階では明らかにならなかった情報がその後も次々と判明します。実は治験以前に、ソリブジンと「5-FU」という抗がん剤との間の相互作用によって実験動物が死亡するという研究結果の存在が今では明らかになっています。さらに、後期第2相臨床試験ではソリブジン服用者で2人の死亡例があったこともわかりました。この第2相試験では死亡を報告する欄がなく、この2人の死亡者が報告されていなかったのです。

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名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。