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様々な「ウエアラブルセンサー」 医療機器界で完成間近

「Apple Watch」には血糖値管理機能
「Apple Watch」には血糖値管理機能(C)日刊ゲンダイ

 医療機器の世界では「ウエアラブル」が花盛りです。実用化されたものは血圧、脈拍、体温など比較的簡単なものに限られていますが、その他の項目のセンサーも研究レベルで完成しつつあります。

 血糖値に関しては、米サンディエゴ大学が開発したタトゥー型センサーが注目されています。肌にシールで貼り付けるタイプで、小さなタトゥーのように見えるため、そう呼ばれています。

「細胞間質液」と呼ばれる肌表面のごく微量の体液を電気的に測定することで、血糖値の変動を感知するものです。すでに食後の血糖値の上昇を検出できるレベルに達しており、本格的な実用化もそう遠くなさそうです。

 アップル社は「Apple Watch」に血糖値管理機能を持たせようとしています。こちらは小型の血糖値センサーを腹部の皮下に埋め込んで、データを電波で「Watch」に取り込むというもの。ちょっとした手術が必要になりますが、実用化は早そうです。体内に埋め込むタイプは、インプラントセンサーと呼ばれることもあります。また、グーグルは、涙から血糖値を測定できるコンタクトレンズの開発を進めています。

 コンタクトといえば、望遠機能を持ったレンズがスイスで開発され、臨床試験に入っています。倍率は2・8倍。3Dテレビ用の液晶眼鏡と組み合わせて使います。スイッチで液晶の状態を変化させると、通常倍率と高倍率の切り替えができるようになっています。高齢者に多い加齢黄斑変性の視力矯正に効果があるそうです。

 他にも各種ウエアラブルセンサーがめじろ押しですが、肝心なのが電力供給。なにしろ小型なのでバッテリー容量もごく小さく、すぐに電池切れになってしまうのです。電磁波を利用して給電するなどの方法が考えられています。

 また、人体そのものをエネルギー源にしようという取り組みも進んでいます。「環境発電」(エネルギーハーベスト)と呼ばれ、熱や光、振動などのエネルギーを電力に変換して利用するというものです。

 とくに注目されているのが熱電材料を使った体温発電です。肌に密着している面と外側の面の温度差に応じて、微弱な電気が流れます。つまりセンサーだけでなく電源までもウエアラブルになるというわけです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。