どうなる! 日本の医療

日本の薬価決定システムは国を滅ぼす

厚生労働省(C)日刊ゲンダイ

 これに真っ青になったのが厚労省だ。国民医療費は今や40兆円で、そのうち薬代金は約10兆円。仮にオプジーボを非小細胞肺がんの患者約5万人に投薬すると、その薬代金は1兆7500億円となり、これまでの薬代の約2割を占めることになる。

「このままでは国民はさらに数千億円の薬代金の負担をのむか、他の病気の薬代を削るしかありません」(厚労省関係者)

 むろん、現行制度でも当初の推計より売れすぎた場合には「市場拡大再算定制度」などの薬価を下げる仕組みはある。

「仮にそれが適用されても現行制度では価格の変更は2年に1度ですから、認可を受けてから2年間は今のままの価格が続くということです」(前出の医療関係者)

 忘れてならないのは、これはオプジーボに限った問題ではないということだ。これまでも、新薬開発当初から適用拡大が予想されながら、患者数の少ない病気の治療薬として申請、その後、一気に市場拡大した薬はなかったのか?

 製薬関係者からは、「後からのルール変更は自由競争の否定」「企業の新薬開発の意欲をそぐもの」との批判があるが、今後も画期的新薬は続々登場する。制度変更の遅れは許されない。

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村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。