Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【費用対効果】期待の高額新薬より健診で早期発見&治療

生存期間延長しても…(C)日刊ゲンダイ

 雑誌などでオプジーボが話題なのは、皮膚がんに比べて患者数が多い肺がんに適用が拡大されたためですが、がんに負けない生活を前提として議論するなら、新薬に目を向けるより早期発見、早期治療の方が現実的でしょう。

 肺がんは早期に発見すれば、手術か放射線で治る可能性が高い。ところが、肺がん検診の受診率は20%ほど。肺がん検診を積極的に受け、たばこを吸っている人は禁煙することです。たばこは、肺がんのほか、喉頭がんと食道がんなど多くのがんのリスクにもなります。たばこがなくなれば、男性の5人に2人はがんにならずに済むといわれているのです。

 検証対象となったがんの薬では、ほかに乳がんのカドサイラ(一般名トラスツズマブ)もありますが、これについても考え方は同じ。マンモグラフィーなどの検査で早期発見、早期治療を徹底すれば、新薬に頼る必要がありません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。