薬に頼らないこころの健康法Q&A

6年連続“総数減少”も…日本の自殺対策は成功しているのか

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 そのためには、①自殺には世代ごとに差があり、40、50代が好発年齢である②日本の人口ピラミッドでは1947年から49年までの3年間の出生数が際立って多い――以上の2点を思い起こすことが必要です。

■4年前に団塊世代が自殺好発年齢を通過

 1947年から49年までに生まれた「団塊の世代」は、出生数約806万人で、その後の3年間より24.3%も多く、近年の330万人前後と比較すると約2.5倍に相当します(厚生労働省「人口動態統計」)。陽水が「傘がない」を歌った当時は、団塊の世代は23~25歳。つまり、若者が急増した時代でした。

 20代は本来、自殺好発年齢ではありません。しかし、若年者の総数が増えれば、当然、若者の自殺数も増えます。つまり、「傘がない」の時代にあっては、自殺する若者が増えたというよりも、若者の総数が増えたので自殺する人も目立ってきたにすぎなかったのです。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。