薬に頼らないこころの健康法Q&A

6年連続“総数減少”も…日本の自殺対策は成功しているのか

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 1997年には団塊の世代が、48~50歳となり、自殺好発年齢に達しました。以来、この世代が全体を押し上げ、自殺者3万人時代が続いたのです。

 そして、2012年、団塊の世代は63~65歳となり、自殺好発年齢を通過しました。その結果、ハイリスク人口の減少に伴って自殺者数も減ったというわけです。

 自殺者数は今後も減り続け、おそらくは再び3万人を超えることはもうないでしょう。なぜなら、団塊の世代並みの巨大な人口を擁する世代は今後出そうにないからです。1997年からの15年間ほどに自殺好発世代が大量発生する時代もまた来ないと思われます。

 年齢階層をそろえて死亡率を再計算した年齢調整死亡率では、日本はこの40年間ほとんど変化していません(精神科医・冨高辰一郎氏の指摘)。年齢を調整しない粗死亡率、まして人口すら考慮に入れていない自殺総数は、増えても悲観にはあたらず、減っても楽観は禁物です。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。