過剰増殖でニキビやかゆみが 「顔ダニ」あなたの顔を蝕む

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 顔にすみ着く「顔ダニ」をご存じだろうか? あなたの顔にもいる。立川皮膚科クリニック・伊東秀記院長に聞いた。

■ニキビやかゆみを引き起こす

 顔ダニの正式名は「毛包虫」。目に見えないほど小さく、誰の顔にでも皮脂腺に数万匹が存在する。ダニの一種だが、じゅうたんや布団にいる家ダニとは違う。

「顔ダニは、普通に生活していれば悪影響を及ばさない常在菌です。むしろ、適正量であれば、皮脂の量のバランスを保つ効果があります」

 しかし、過剰に増殖すれば、さまざまな「害」が出てくる。まず、難治性のニキビの原因のひとつになる。

「顔ダニの死骸や抜け殻が毛穴に詰まるのが原因です」

 次に、かゆみだ。顔ダニそのものに対するアレルギー反応や、顔の表面に残った老廃物や抜け殻、死骸がアレルギー症状を引き起こしてかゆくなる。

 さらに、顔の炎症がひどく現れるケースもある。

 顔ダニが増えるのは、顔ダニのエサ、つまり皮脂の分泌が増えるから。すると、豊富なエサによって、顔ダニが活発に繁殖するようになる。

■寝ている間に活発化

「夜、きっちり洗顔を行わず、余分な皮脂や汚れが皮膚に残ったまま寝ると、顔ダニはそれらを食べて増えていくのです」

 顔ダニ増加のきっかけでよくあるのは、女性の不十分なクレンジング(化粧落とし)。しかし、男性だって油断できない。皮脂は、脂っぽい食事でも増える。居酒屋で酒を飲みながら、空揚げやポテトフライなどハイカロリーのつまみを食べ、夜遅くに酔っぱらって家に帰り、洗顔どころか、風呂にも入らずバタンキュー……。これでは、顔ダニが増えても仕方がない。

「『ニキビ=顔ダニ』ではないが、何をやってもよくならないニキビがあれば、顔ダニを調べたほうがいい」

 顔ダニの治療は、洗顔はもとより、顔ダニの内服薬による除菌を行う。症状が治まってきたら、顔ダニが「適正量」に落ち着いたと考えられる。あとは、顔ダニが過剰に増えすぎないよう皮脂のコントロールに注意する。

 ただし、ニキビに対しての診断、治療を適切に行っている皮膚科が少ないことが大きな問題になる。

「治りにくいニキビにはさまざまな原因が絡んでいます。ニキビ治療に詳しくない医療機関で、間違った塗り薬を処方され、顔がパンパンに腫れてしまい、当院に駆け込んでくる患者さんは珍しくない」

「実はニキビではなかった」、または「ニキビ+ニキビ以外の疾患」というケースも非常に多い。顔面にフケのような湿疹を生じる脂漏性皮膚炎、顔ダニと同様に常在菌であるカビの一種「マセラチア」が原因のマセラチア毛包炎などだ。

 10年以上もニキビに悩み、医療機関を転々としてきた患者が、伊東院長の診察でニキビとは全く違う「血管線維腫」という良性腫瘍が判明したこともある。当然ながら、それぞれ治療法は異なる。

「診断の段階で、病歴、合併症の有無、毛穴の詰まり(閉塞)が強いかどうかなどをしっかり調べてくれる医師を選ぶべき。すぐに薬を処方し、それも何カ月分も出すところは避けたほうがいい」

 ニキビは、皮膚がんのように、命に関わる皮膚疾患ではない。しかし、悩んでいる人には大きなストレス源なのは間違いない。不必要な治療に振り回されないためには、患者側も「自衛」するしかない。

関連記事