介護を助ける“切り札”はコレだ

徘徊対策 山岳遭難救助隊の装備がヒントになった捜索機器

徘徊捜索機器として開発された「HITOCOCO」
徘徊捜索機器として開発された「HITOCOCO」(提供写真)

 厚労省の推計によると、認知症者は462万人(2012年)。これが25年には700万人を数え、65歳以上の5人に1人が認知症者になる。

 家族がこうした認知症者を抱えると、もっとも神経をすり減らし、大きな負担になるのが「徘徊」の対策だ。

 埼玉県草加市に住むサラリーマン、Sさんの父親(71)は3年前に軽い認知症と診断された。

 最初の頃は、家族の目を盗んで外出し、スーパーで買い物した後、金を支払わず帰宅する行動を繰り返した。店員から追いかけられ、何度警察のお世話になったことか。

 次第に認知症が進行すると、深夜、あてもなく外出するようになった。家族総出で自宅周辺を捜し回ったことも、2度や3度ではない。

 こうした徘徊捜索の機器として開発されたのが「HITOCOCO」(製造・オーセンティックジャパン㈱=福岡市)である。

 もともと、山岳遭難救助の現場で、警察や山岳遭難救助隊が使っている捜索機器からヒントを得たものだ。発売元の「キングランメディケア㈱」(東京・神田)営業本部の青木秀行氏が言う。

「およそ1キロ圏内の捜索が可能です。認知症者にお守り袋の中などに入れた重さ20グラムの子機を携帯してもらい、親機(70グラム)から離れると、6秒以内に反応がなければ親機が警告(音、振動)します。サーチ機能は、暗闇でも関係なく、画面に、“徘徊者の所在地まで何百メートル”といったように矢印で方角を指示してくれます」

 介護保険対象商品で、個人負担のレンタル料金は1カ月700円。福祉用具レンタル店で求めることが可能だ。

 認知症者の見守りには、この他に「徘徊みまもり太郎」(㈱レオン=長野県小諸市)という機器もある。玄関に人感センサー(距離、7メートル範囲)を置き、外出するときやベッドから転落してもアラームが鳴る。

 内蔵したマイクによる音声通話も可能だ。こちらも介護保険レンタル対象機器で、月に約4000円。買い取りは5万2000円である。