独白 愉快な“病人”たち

大桃美代子さん 原稿の一部がぽっかり見えなくなり手術を決意

病気になり「見えることのありがたさ」を知った
病気になり「見えることのありがたさ」を知った(C)日刊ゲンダイ

 60歳を越える7~8割の人は白内障だと聞いています。でも、まさか40代で自分がそうなるとは思ってもいませんでした。

 眼科を受診したのは2013年2月でした。目に違和感があって、手でこすったらビョーンと目の粘膜が伸びたんです。時季的にスギ花粉の頃でしたし、ちょうどPM2.5が話題になった年だったので、「アレルギーかな」と思いました。でも、病院で検査をすると、アレルギーにとどまらず医師から「いろいろ病気が見つかりました」と。そして、告げられたのが右目の若年性白内障でした。さらに左目も少し白内障の気があり、何と両目に緑内障もあると……。

■原稿の一部がぽっかり見えなくなった

 ただ、そう言われても自覚症状がまったくなかったので、初めは「本当かな?」と半信半疑でした。でも、経過観察するうちに右目の視野の真ん中が白く見えるようになってきたんです。手術を決意したのは、原稿の一部がぽっかり見えなくなったからでした。少し角度を変えたり、文脈を考えれば察しがつく程度のわずかな範囲でしたが、テレビの生放送でニュースを読む仕事なので、このままではいけないと思ったんです。

 加齢による白内障は、視野の外側の周辺から白くなることが多いらしいのですが、私は中心からでした。しかも、ある日鏡を見たら、右の黒目が少し外側へ離れてしまっていたんです。右目が見づらい分、無意識に左目で物を見るようになって、右目がサボった結果だそうです。

 手術は14年6月に受けました。白内障手術の名医である「日本橋白内障クリニック」の赤星隆幸先生にお願いしました。手術自体はわずか5分ほど。濁ってしまった水晶体を砕いて吸い出し、眼内レンズを入れて終了です。日帰り手術だったので、数時間後には家に着いていました。

■術後は驚くほど視界がクリアになり感動

 でも、術後は禁止事項が多いんですよ。1~2日は下を向いてはいけないし、重い物を持ったりして眼圧をかけるのもダメなんです。お風呂には1週間入れないし、洗髪もNG。顔も洗えなければ、料理もダメ。下を向かないとできないことって意外と多いんですよね。事前にそう聞いていたので、手術前に2~3日分の食事をストックしました。外食するにも外出することも危ないですから。日帰りできるのも善し悪しですよ。私のような一人暮らしだったり、夏場の手術なら、入院のほうが楽かもしれません。

 そうはいっても、術後4~5時間で驚くほどクリアな視界になったので感動しました。「この部屋、こんなにホコリや髪の毛があったんだ」って気づいちゃったりして(笑い)。それほど見えていなかったってことなんです。

 手術に際しては、眼内レンズを「単焦点」にするか「多焦点」にするかを決めなければなりません。単焦点は遠いか近いかどちらかに焦点を合わせたレンズで、多焦点は遠近両用レンズ。多焦点のほうが便利そうだし、こちらを勧める医師も多いと聞きますが、公的医療保険の適用外なので単焦点の何倍も高価になります。迷うところですが、必ずしも多焦点レンズがいいとは限らないようです。考え方としては、個人のライフスタイルを基準にすること。私は本や原稿を読むことを重視したので、単焦点にしました。知り合いの眼科医にも「それが正解」と言われ、ホッとしました。

 緑内障は視野が欠ける病気で、最悪失明するといわれますが、今のところ自覚はありません。眼圧を上げないための点眼薬を毎日欠かさないことと、血圧を上げない食事を心掛けています。さらに、網膜の再生を助けるといわれるサプリメント「ルテイン」を飲み、ブルーライトをカットする眼鏡を愛用して、目が疲れたらすぐ休むようにしています。

 時にはまぶたの上からそっと目を撫でて褒めてあげたり……。情報番組の司会をやっているので、新聞5紙に毎日、目を通すだけでも結構いっぱいいっぱい(笑い)。正直、好きな小説も読めない状況ではあります。

 でも、病気になってつくづく「見えることのありがたさ」を噛みしめました。手術で視力が落ちてしまう人もいると聞き、術前には「今のうちに」と美術館に行ったり、好きな景色を見に行ったりしました。将来に不安はありますが、幸いにもこの病気は痛みを伴う病気ではないし、進行するまで時間があるので、今見えることの幸せをしっかり味わいたい。なるべくたくさん笑っていられる人生でありたいと思っています。

▽おおもも・みよこ タレントとして情報番組からバラエティーまで幅広く活躍中。中越地震での被災を機に地元新潟PRにと米作りを始め、また農業だけでなく食育や地域活性化にも関心が高い。番組がきっかけで始めたDIYでは、昨年DIY普及プロジェクト「Team Omomo」を立ち上げてメーカーなどとコラボしている。