医療数字のカラクリ

患者は新薬を期待するが治験の「偽薬」はハズレではない

 逆に新薬は、これまでにない治療効果を期待できる半面、副作用の危険も高い面があります。これはハイリスク・ハイリターンです。

 そう考えると、どっちもどっちであることがわかります。どっちもどっちですから、偽薬を比較対象にすることは決して倫理に反することではありません。よくある二択問題です。

 科学的には偽薬を飲む比較対象があることは重要で、倫理的でかつ科学的な臨床試験を担保するために偽薬群を設けるのは、大事なことなのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。