全国どこでもロボットによる質の高い手術を受けられるとなれば、いまのように、特定の病気に対する名医を懸命に探し出し、その名医に手術をお願いする……というような手順が必要なくなるわけです。そうなったら、「老兵は消え去るのみ」です。私はそれでいいと思っています。もし、消え去りたくないのであれば、外科医は機械に負けないようなスーパーな実力を身につけるしかありません。“戦い”というのはそういうものなのです。
宇宙工学などの部門では、「機械を使った技術は、人間の手による職人の技に及ばない」といわれます。しかし、そうした人間の技術は、極めて特殊な世界の人々が必要としているもので、国民全員が求めているわけではありません。工業製品とは違い、医療は国民全員が必要とする“普遍化”した分野です。過去を振り返っても、普遍化したものはできる限りオートマチックに対処できるように技術が進化しています。そうした点を考えても、医療は先端技術を利用してオートマチック化していく方向に進むのは間違いないでしょう。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」