天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

外科医がロボットに逆転される未来も

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 全国どこでもロボットによる質の高い手術を受けられるとなれば、いまのように、特定の病気に対する名医を懸命に探し出し、その名医に手術をお願いする……というような手順が必要なくなるわけです。そうなったら、「老兵は消え去るのみ」です。私はそれでいいと思っています。もし、消え去りたくないのであれば、外科医は機械に負けないようなスーパーな実力を身につけるしかありません。“戦い”というのはそういうものなのです。

 宇宙工学などの部門では、「機械を使った技術は、人間の手による職人の技に及ばない」といわれます。しかし、そうした人間の技術は、極めて特殊な世界の人々が必要としているもので、国民全員が求めているわけではありません。工業製品とは違い、医療は国民全員が必要とする“普遍化”した分野です。過去を振り返っても、普遍化したものはできる限りオートマチックに対処できるように技術が進化しています。そうした点を考えても、医療は先端技術を利用してオートマチック化していく方向に進むのは間違いないでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。