役に立つオモシロ医学論文

子供の胃腸炎対策はリンゴジュースでもいい!?

(C)日刊ゲンダイ

 お子さんがウイルス性胃腸炎にかかってしまった時、親御さんにとっては、脱水症状を心配されるかもしれません。医療機関を受診すると、脱水予防に経口補水液を勧められることもあるでしょう。経口補水液とはスポーツドリンクと似たような飲料ですが、ミネラル成分を強化し、糖分を抑え、水分補給により適した飲料といわれています。

 しかし、お子さんによっては、甘味が少なく塩分のやや強い経口補水液は「飲みにくい」というケースもあります。ただでさえ、嘔吐しているわけですから、お子さんの好きなジュースなどで脱水予防できれば、それに越したことはありません。

 米国医師会誌電子版(2016年4月30日付)に、胃腸炎への「リンゴジュース」と「経口補水液」の効果を比較した論文が掲載されました。この研究は、カナダの小児救急を受診した胃腸炎症状と脱水所見のある6カ月から5歳までの患者が対象となりました。被験者は、「水で希釈したリンゴジュースを投与するグループ」(323人)と「リンゴ味の経口補水液を投与するグループ」(324人)にランダムに振り分けられ、7日以内の治療失敗(再入院や点滴治療の開始など)が検討されています。

 その結果、治療失敗はリンゴジュースを投与したグループで16.7%、経口補水液を投与したグループでは25・0%と、リンゴジュースは経口補水液に劣らない効果が示されました。もちろん、重症患者においてはこの限りではないかもしれません。

 しかし、経口補水液が飲みづらいということであれば、リンゴジュースを薄めて飲ませても治療経過に大きな差がないことが示されています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。