医師は見極めて 安心な「胃カメラ検査」に4つのポイント

技術不足で未熟な医師はたくさんいる
技術不足で未熟な医師はたくさんいる(提供写真)

 この時期、人間ドックや健康診断で再検査を勧められ、改めて胃カメラ検査を受ける人が増えるという。しかし、「胃カメラなんてどこで受けても同じようなもの」なんて考えていると、取り返しのつかないことになりかねない。

 胃カメラというと、「苦しくてツライ検査」というイメージを持っている人は多いだろう。これは、技術不足のまま胃カメラ検査を行っている未熟な医師がたくさんいることが一因になっているという。日本消化器内視鏡学会専門医で、これまで7万件以上の内視鏡検査を行ってきた江田証氏(江田クリニック院長)が言う。

「現在の医療現場では、医師免許を持っていれば、消化器病学の知識がなくても、自由に胃カメラを使って検査することができてしまいます。大学病院や総合病院では、トレーニング中の研修医が胃カメラ検査を行うケースがありますし、研修医時代にサラッと経験しただけなのに、堂々と胃カメラ検査を行っている消化器内科医以外の開業医も少なくない。こうした知識が浅い未熟な医師たちによるトラブルは後を絶ちません」

 口から押し込んだ胃カメラで患者の咽頭に穴を開けてしまい、左肺と右肺の間の縦隔が細菌感染して縦隔炎を引き起こしたケースもあるという。安心して胃カメラ検査を受けるためには、患者は医師や病院を見極める必要があるのだ。

■大腸内視鏡がうまい施設を選ぶ

 最低ラインは、「消化器病学会専門医」「消化器内視鏡学会専門医」の資格を持っている医師のところで検査を受けること。胃カメラの経験をある程度積んでいる医師かどうかの目安になる。資格を持っている医師はそれぞれの学会のホームページに掲載されているから、受診する前に探しておきたい。

 さらに、中でも「大腸内視鏡がうまいといわれている施設を選ぶ」ことで確度が上がる。

「内視鏡検査は体内に細い管を挿入して行い、管は、手元の『アングル』を操作して微妙な角度を調節しながら、前後左右に動かしていきます。アングルをいかに効果的に器用に操作できるかが重要なのです。実は胃カメラは、患者さんの苦痛を無視して管を喉からグイグイ押し込んでいけば食道まで到達します。しかし、大腸内視鏡はそうはいきません。ただ管を押し込んでも突き当たった部分の腸壁が伸びるだけで、患部には届きません。押して挿入していくというよりも、『引きながら入れていく』感覚が必要です」

 それだけ、大腸内視鏡は胃カメラよりも高度なスキルが求められる。患者を苦しめずに大腸内視鏡を行える医師なら、胃カメラも正確に扱えると判断できるのだ。

 ヘリコバクター・ピロリ菌に関する知識がある医師かどうかも大きな判断材料になる。

「胃や食道疾患についての治療方針は、ピロリ菌の知識が欠かせません。ピロリ菌の感染があるかどうかという視点で検査をしていない医師は、重大な見落としをするリスクがあります。当院でも、専門医以外がやった胃カメラで異常なしと診断されても症状が治まらず、検査を受け直しにくるケースがたくさんあります。一目見ただけで進行胃がんとわかる病変を『心配ない』と数年も見逃され続け、結局、胃を全摘せざるを得なかった患者さんもいます」

 前述した「消化器病学会専門医」や「日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染症認定医」などの資格を持っている医師を探したい。

 新しい機械を使用しているかどうかも重要だ。古い機械では小さな胃がんやポリープを見逃しやすくなるという。

「特に経鼻内視鏡は急速に進歩していて、暗い胃の中でも明るいうえに画質が鮮明で、見やすくなっています。胃がんが光って見える特殊光を使用できる機種もある。『NBI』や『FICE』(ファイス)といった機能がある機械を使っていれば、新しい機種だと判断できます。施設のホームページで機種を確認したり、電話でたずねてみるのもいいでしょう」

 せっかく受けるなら、正しい胃カメラ検査を受けたいものだ。

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