薬に頼らないこころの健康法Q&A

少年による殺人事件 実は年間100件未満で推移している

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

■少年たちが抱える「攻撃性」

 もっとも、「それでも少年たちは、『こころの闇』を抱えているのではないか」と問う人もいるでしょう。

 彼らは「こころの闇」を抱えてはいません。彼らが抱えているものは何か。それは、かつて若者であった大人たちは皆、知っているはずです。そうです、彼らが抱えているのは「攻撃性」なのです。

 そもそも、かつて青春ドラマに描かれた若者群像は、どれも乱暴な姿ばかりでした。高齢者世代にとって懐かしい映画を例にとれば、J・ディーン「理由なき反抗」(1955年)、石原裕次郎「太陽の季節」(1956年)、F・トリュフォー監督「大人は判ってくれない」(1959年)、A・ペン監督「俺たちに明日はない」(1967年)、P・フォンダ「イージー・ライダー」(1969年)など、どれも乱暴な若者が主人公です。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。