薬に頼らないこころの健康法Q&A

少年による殺人事件 実は年間100件未満で推移している

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 団塊の世代の場合、現在は60代後半にさしかかっていますが、若かりし頃は「造反有理」の旗印の下にムチャなことをしていました。世代最高の知性のはずの東大生すら、教授たちを縛り上げて安田講堂を占拠するという暴挙に出ていました。

 その次の世代は、「シラケ世代」とか「新人類」などといわれましたが、今ではもう50代。この世代に属する尾崎豊は、「シラケ」どころか熱すぎて、校舎の窓ガラスを壊したり、バイクを盗んで走り出す少年の心性を歌って、その過激さたるや「旧人類」並みでした。

 尾崎豊が人気絶頂であった1988年には、東京都足立区で少年による女子高生コンクリート詰め殺人事件が発生しています。犯人たちは、今では40代のおじさんです。

 とにかく、若者は乱暴です。思春期は、暴力衝動が急激に高まる年代。それは万古不易の真実。自分の胸に聞いてみたら、すべての大人たちが身に覚えがあるはずです。あの激しい衝動こそが若者のリアルな姿です。この明々白々たる事実から目をそむけて、「こころの闇」などというあいまいな言葉でごまかしても意味はないのです。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。