有名病院 この診療科のイチ押し治療

【急性期の脳卒中】東大和病院・脳卒中ケアユニット(東京都東大和市)

東大和病院・脳卒中ケアユニットの角田尚幸センター長(左)
東大和病院・脳卒中ケアユニットの角田尚幸センター長(左)/(C)日刊ゲンダイ
チーム医療による24時間体制の集中治療を実施

「脳卒中ケアユニット」(SCU)とは、発症直後からの急性期の脳卒中患者を専門に受け入れる治療病床。専門知識をもつ経験豊富な医師、看護師、リハビリテーション療法士、医療ソーシャルワーカーによるチーム医療で、24時間体制の集中的な治療を行う。

 同院は、北多摩西部地域(東大和市、武蔵村山市、立川市、昭島市、国分寺市、国立市)の救急医療を担う急性期病院。同院のSCUは、脳卒中・脳神経センターの50床のうち12床が割り当てられている。年間病床利用率は99%になる。

 SCUを統括する脳卒中・脳神経センターの角田尚幸センター長(神経内科医・写真)が言う。

「脳卒中の治療は時間との勝負です。脳卒中治療ガイドラインでも強く推奨されていますが、SCUで治療することで死亡率の低下、在院期間の短縮、自宅退院率の増加、長期的な日常生活能力や生活の質の向上が大きく違って、発症24時間以内の救急搬送は全例受け入れています」

 同院は、東京都脳卒中急性期医療機関に認定されていて、脳に詰まった血栓を溶かすt―PA治療(発症3時間以内の投与が有効)実施が可能な施設でもある。軽症者であれば、SCU(最大14日間の入室と定められている)から直接、歩いて帰宅できる人(全体の1割程度)もいるという。

 SCUの医師は脳卒中・脳神経センターと兼務しているが、看護師21人(うち脳卒中リハビリ認定看護師2人)と、リハビリスタッフ17人は専任で治療にあたる。

「脳卒中の急性期は感染症や合併症の管理も必要になるので、看護師の対応も非常に大切になります。また、遅くても入院翌日には理学療法士や言語聴覚士が介入してリハビリを開始します」

■整備された“地域連携パス”

 同じ脳卒中でも60代と80代では病態が違う。脳梗塞が軽くても、70代後半以降はもともと認知症をもっている確率が高いので、もとの症状と新たな症状を把握して何ができるか判断することが大切になるという。

 2次救急病院(中等症患者対応)の同院では、再発予防と後遺症をできる限り軽くして、後の生活の質をよくすることが主な目標になる。

「脳卒中では、重症度に合わせて20種類の院内クリニカルパス(診療計画)を作成しています。すべてパスに沿って、治療や離床のタイミング、リハビリなどが計画的に進められるので、患者さんもご家族も安心して治療に専念できるのです」

 SCU退室後、多くは病態に応じて同院の脳卒中・脳神経センターに移る場合もあれば、退院して地域の回復期病院や維持期病院、在宅療養へと移ることになる。その際も、地域の各転院先が患者の情報を共有できる“地域連携パス”がしっかり整備されているので安心できる。

「脳卒中治療の基本は在宅生活に戻れるようにすることです。患者さんやご家族には最初の面談からソーシャルワーカーも加わり、地域連携パスを示し、病態に合わせて、どのような流れで在宅を目指すか、きちんと説明しています」

 ゴールが見える医療。要介護になりやすい脳卒中だからこそ大切だ。

■データ
社会医療法人財団大和会の中核病院。2014年に付属クリニックを開設。
◆スタッフ数=医師6人
◆SCU病床数=12床
◆SCU入院患者数(2015年)=482人
◆t―PA実施数(同年)=12件