病院は本日も大騒ぎ

人生観を変えた恩師の下の世話

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 彼女はそう言うと、少しさびしそうな顔をしていました。彼女は恩師の食事の介助やオムツを替えたりしたそうです。それ以外、細かくは語りませんでしたが、「恩師のオムツを替え、排泄物の処理をして、ある意味、人生観が変わった」「人はひとりでは生きられない」「人には優しくしなければダメ」と強く思ったそうです。

 私も彼女と同じような経験があります。私が勤務する病院に学生時代の先生ががんで入院し、お世話をしました。かつては、あれほど立派で堂々としていた先生が、弱々しく、わがままに振る舞われるのを見て、人間のむなしさを感じたものです。

 どんな人も、いずれは年老いて体の自由が利かなくなり、人のお世話にならざるを得ません。たとえ、世間で高い評価を受けている人でも、不遇だった人でも同じです。

 そのとき、初めて生の人間としての評価が下る。私はそう思うのです。

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