危ない 薬の勘違い

災害時に必須 治療や診察で医療者に伝える“クスリの情報”

(C)日刊ゲンダイ

 自然災害や交通事故など、誰にでも不測の事態が起こりえます。そうした時、治療や診察に当たる医療者に伝えるべき「クスリの情報」について考えてみます。

①必要な情報…普段から使用しているクスリを正しく把握するためには、名称・量・回数・服用時間のすべての情報が必要です。「グリメピリドを飲んでいます」だけではなく、「グリメピリド錠1ミリグラム 1日2錠 朝夕食後」まで伝えることが大切になります。

②曖昧な情報は危険…たとえば、バファリンとワーファリン。似た名前ですが、どちらも「血液をサラサラにする薬」という認識だけの方がたくさんいます。両者はまったく違う薬です。飲み合わせや注意点も大きく異なります。普段どちらを飲んでいるかによって、対応も変わります。曖昧な情報は危険をはらんでいると考えてください。

③最新の情報を…「半年前にはこの薬を飲んでました」とおっしゃる方がいます。しかし、その時と今が異なるのであれば、その情報が重要です。副作用があって変わったのだとしたら、変わる前のクスリの情報は逆に危険なこともあるのです。

④外用剤の情報…クスリの情報は飲み合わせだけを確認するものではありません。クスリから疾患を推測することで、危険なクスリがわかることがあります。「緑内障の点眼薬を使っているから、この鼻炎薬は危ない」ということがわかるケースがあるのです。点眼・吸入・貼付剤等の外用剤の情報も必要です。

⑤情報の保管場所…「お薬手帳」をご自身で持ち歩くことが一番ですが、なくしてしまったらおしまいです。そのため“バックアップ”があると便利です。県外の家族が同時に把握しておく、施設スタッフが施設で管理する、携帯電話などで写真を撮っておく……といった方法が考えられます。

 熊本地震の被災地支援に出向いたとき、電話やメールでクスリの情報を確認できれば……と何度も感じました。高齢者、乳幼児、アレルギー歴がある、慢性疾患があるなど、「薬がなくなると困る」という方は、ぜひクスリの情報管理を見直していただければと思います。

金田崇文

金田崇文

1979年、東京都生まれ。千葉県立船橋高校を経て岡山大学薬学部を卒業。2004年からこやま薬局(岡山県)に勤務。管理薬剤師を務めながら、各地で薬や健康をテーマにした講演活動を行っている。