独白 愉快な“病人”たち

作家・なかにし礼さん救った執刀医のひらめきと“神の一手”

作家・作詩家のなかにし礼さん(C)日刊ゲンダイ

 ところが、いざ開胸してみたら、がんは想定以上に気管支に密着していて、何もせず閉じるしか手はありませんでした。しかし閉じる前、執刀医はある種のひらめきで、リンパ節にあるがんを気管支側に押している“静脈”をパチンと切っておいたそうです。がんを圧迫しないようにすれば、リスク回避ができるのではないかというわけです。

 結局、穿破しなかったのはこの“神の一手”のおかげでした。単に現状に対処するだけでなく、経験に裏付けされた“ひらめき”を駆使して先手を打つ。これが名医ですよね。おかげで今回も命拾いしました。

■抗がん剤の副作用でうつ症状

 その後は、抗がん剤をメーンにしてがんを叩くことになりました。嘔吐や脱毛といった副作用は仕方ないと思っていましたが、4回目の抗がん剤治療で心が折れ、死にたくなった。自分らしからぬ状態だったので、抗がん剤の影響ではないかと薬剤師に相談してみると、「ままあります。先生に聞いてみます」と言われました。

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