以前も述べたように、日本が世界屈指の自殺大国であることに変わりはありません。ここ数年、毎年自殺者総数は減っていますが、年齢階層を揃えて死亡率を再計算した年齢調整死亡率を見るかぎり、日本の自殺は減っていません。日本の人口ピラミッドは、高齢化により「自殺好発年齢」である働き盛り人口が減ってしまいました。自殺者総数の減少は、この国が自殺者を3万人も出すことができないほどに“老いてしまった”ことを示しているにすぎません。
その一方で、若者の自殺は減っていません。10代の自殺率は、1990年以降、一貫して上昇し続けているとするデータもあります。国全体が老いて、もはや、あまり自殺しない高齢世代が支配者層をなす一方で、少数派の若年者層が追い詰められ、自殺しているのがこの国の姿といえます。
私は精神科医として毎年200~300人程度の思春期(20歳未満)の患者さんを診ています。彼ら、彼女たちの中でかなりの割合が、自殺を一度は考えています。思春期を診る精神科医の課題は、何といっても自殺の防止です。
薬に頼らないこころの健康法Q&A