薬に頼らないこころの健康法Q&A

急増する10代の自殺対策 「人生には別道もある」を伝える

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 以前も述べたように、日本が世界屈指の自殺大国であることに変わりはありません。ここ数年、毎年自殺者総数は減っていますが、年齢階層を揃えて死亡率を再計算した年齢調整死亡率を見るかぎり、日本の自殺は減っていません。日本の人口ピラミッドは、高齢化により「自殺好発年齢」である働き盛り人口が減ってしまいました。自殺者総数の減少は、この国が自殺者を3万人も出すことができないほどに“老いてしまった”ことを示しているにすぎません。

 その一方で、若者の自殺は減っていません。10代の自殺率は、1990年以降、一貫して上昇し続けているとするデータもあります。国全体が老いて、もはや、あまり自殺しない高齢世代が支配者層をなす一方で、少数派の若年者層が追い詰められ、自殺しているのがこの国の姿といえます。

 私は精神科医として毎年200~300人程度の思春期(20歳未満)の患者さんを診ています。彼ら、彼女たちの中でかなりの割合が、自殺を一度は考えています。思春期を診る精神科医の課題は、何といっても自殺の防止です。

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井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。