薬に頼らないこころの健康法Q&A

急増する10代の自殺対策 「人生には別道もある」を伝える

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 私の場合、不登校になった中学生に対しては、まずは行くように促してみます。でも、どうしても無理な場合、目標を切り替えて、適応指導教室への通所、あるいは、転校、休学、留年などを勧めます。

 高校生の場合も、最初は登校を促します。特に3年生になってあとわずかで卒業というときになっての不登校の場合、相談室登校を出席扱いにしてもらうなどの寛大な処置を学校側に求めつつ、何とか卒業証書をもらうように働きかけます。しかし、どうしても登校できなければ、無理は言いません。単位制高校、定時制高校に転校してもいいでしょう。高校を中退して、予備校に通って、高校卒業認定試験を経て大学に行く方法だってあります。

 私のところに来るほとんどの中高生は、そうやって新たな道を探して生きていきました。不登校の経験は挫折だったと思います。でも、それは自殺しなければならないほどの事態ではありません。

 人生には「敗者復活戦」が用意されています。大人たちのすべきことは、「他にも道がある」ことを説得力をもって伝えていくことなのです。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。