最新「緑内障」治療 点眼、レーザー、手術の3段階で改善

点眼薬が第1選択
点眼薬が第1選択(C)日刊ゲンダイ

 緑内障は日本人の失明原因の第1位。6月7日の「緑内障を考える日」に合わせ、緑内障治療の最新事情を知っておきたい。東海大学医学部専門診療学系眼科学・鈴木康之教授に聞いた。

 緑内障は、日本では40歳以上の20人に1人、70歳以上の10人に1人が該当するといわれる。

 眼球の中には栄養や老廃物を運ぶ「房水」が流れている。房水は目の器官である「毛様体」から分泌され、眼球内を循環し、「シュレム管」という器官から排出される。ところが、なんらかの原因で排出がうまくいかなくなると、房水が眼球内にたまって眼圧が上昇。眼球の後部にある視神経が圧迫されて視野が欠損するのが緑内障だ。

 完治させる治療法はなく、「眼圧をコントロールし、失明を回避する」対症療法になる。治療は「点眼薬」「レーザー」「手術」だ。

 一般的には点眼薬が第1選択になるが、レーザーを試す手もある。

「レーザー線維柱帯形成術です。房水の流路にレーザーを軽く当てて刺激し、房水の通りを良くして眼圧を下げやすくします」

 これで眼圧が下がる人もいる一方で、効果がない人、かえって眼圧が上がる人もいる。

「適応の見定めが難しく、行うタイミングは医師によって違う。どちらかというと、治療の入り口として入りやすい点眼薬から始め、効かなければレーザーという流れが多い」

 点眼薬やレーザーで眼圧が十分に下がらなければ、手術が検討される。2012年、“新手術”である「チューブシャント手術」が保険適用になった。これを加え、現在、手術は大きく分けて3通り。

■点眼薬の前にレーザーを試す手も

 まず、従来からある「流出路再建術」と「濾過手術」。流出路再建術は房水の流出路を開いて房水の通りをよくし、眼圧を下げる。初期から中期の症例によく行われる。

 一方、濾過手術は結膜に穴を開けて、結膜下に向けて房水の新たな排出路を作る。眼圧下降効果が高く、進行した症例がよい適応である。

 次に、チューブシャントに分類されるうち、“プレート”のないもの、通称「ミニチューブ」は濾過手術の一種だが、穴を開ける代わりにステンレスの小さいチューブを差し込み、それを房水の新たな排出路にする。

 そして、チューブシャント手術。通常はミニチューブを含む濾過手術を何度か行い、それでも眼圧がコントロールできない場合に行う。結膜の下にチューブがつながったプレートを設置し、チューブを眼内に差し込むと、プレートの周りで炎症細胞が働き皮膜が作られる。その結果、房水がチューブを通って「袋(皮膜)」に運ばれ、そこから徐々に排出される。

 これまで、濾過手術でうまくいかなければ、房水を分泌する毛様体にレーザーをあてて「破壊」する治療に進んでいた。その前のステップとして、チューブシャント手術ができるようになったのだ。

 ただし、チューブシャント手術には問題点がいくつかある。

「感染症や、チューブの先端による角膜の障害のリスク、眼球運動障害などの合併症です。何より、ミニチューブと同様に、異物を長期的に置くことを疑問視する声もあります。慎重に行わなければならない治療であることは確かです」

 重症の緑内障患者には、チューブシャント手術をやらずに、毛様体を破壊するレーザー治療をするケースもある。合併症などが少なく、外来でもでき、比較的患者の負担が少ないからだ。

 緑内障を発症すれば、一生付き合っていかなければならない。どういう治療があるのか、改めて頭にしっかり叩き込もう。

■開放隅角タイプ

 緑内障にはいくつかのタイプがあるが、ここで取り上げているのは、圧倒的多数を占める「開放隅角タイプ」。特徴的な症状がなく、長期間にわたってゆっくりと症状が進行する。

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