独白 愉快な“病人”たち

タレント生稲晃子さん 焦りと恐怖が高まったがんの再々発

生稲晃子さん(C)日刊ゲンダイ

■入院前に7歳娘と銭湯に

 忘れられない出来事は、入院する前に娘と銭湯に行ったことです。当時7歳だったかな。娘は以前から「銭湯に行きたい」と言っていたんですが、手術で胸を取ってしまったらもう行けないかもしれないと思ったんです。そこは昔ながらの銭湯で、お釜型の古~いドライヤーがあって、2人で写真を撮ったりして(笑い)。一番幸せで一番悲しい時間でした。

 でも、娘のために命を優先するのは母親として自然なことです。全摘出に迷いはありませんでした。ただ、最初にお話ししたようにつらかったのはそこからです。乳房の同時再建手術の際、胸の筋肉の下にエキスパンダー(皮膚拡張器)という袋のようなものを入れて、皮膚を伸ばすのがとにかく痛かった。

 早い人は半年ぐらいで伸ばした皮膚が落ち着いて、シリコーン製のインプラントに入れ替えると言われます。でも私の場合、放射線治療をしていた影響で伸びにくい皮膚になっていたそうで、2年間かかりました。圧迫感とともに、ズキンズキンと24時間ずっと寝ても起きても痛い。最終的には皮膚が伸びずに肋骨がゆがんでしまったほどでした。でも、今は無事に再建手術も済み、つらかったことを忘れる瞬間もあるんですよ。

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