天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「リードレス」が実現したペースメーカーは今後さらに進化する

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 今年4月、米国で「リードレスペースメーカー」が初めて薬事承認されました。

 ペースメーカーは、脈が遅くなったときに作動して心筋に電気刺激を送り、心臓が正常に収縮するようにサポートする装置です。洞不全症候群など慢性的に脈が遅くなる徐脈の患者さんに対し、主として内科医による埋め込み手術が行われます。

 従来のペースメーカーは、電子回路とリチウム電池が収まった「本体」、電気信号を伝える「リード線」によって構成されています。今回、承認されたのは「リードがないペースメーカー」で、日本でもすでに臨床試験が行われています。将来的には、保険適用の治療となる可能性は高いでしょう。

 ただ単にリードがなくなるだけかと思うかもしれませんが、これは患者さんにとってかなり大きなメリットといえます。ペースメーカーのトラブルはリードに関係したものが多く、再治療のうち15%程度がリードのトラブルによるものといわれているからです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。