ペースメーカーの埋め込み手術は、前胸部を切開し、リードを鎖骨下の静脈から挿入して心房や心室に留置し、本体は皮膚の下に設置します。埋め込んだ後にリードを覆っているシリコーンが破れて血液が浸入し、リードが腐食してショートしたり、骨と骨の間に挟まれたリードがこすれて断裂することも珍しくありません。抵抗力が落ちた際の菌血症でリードの先端部分が感染を引き起こし、合併症を招くケースもあります。
内科医による埋め込み手術が行われた翌日に、再手術した患者さんもいました。ペースメーカーがうまく馴染まずに、浮いてずれてしまっていたのです。リードレスならば、少なくともそうしたリードのトラブルを最小限、回避できるようになります。リードが原因で何度も手術を受けなければならない患者さんもいるわけですから、それだけで大きな進歩なのです。
ただし現状では、最も単純な機能に特化しているので、このペースメーカーで十分な治療になる患者さんにしか適応していません。2本のリードによる刺激が必要な場合は使えないため、かなり限定的な適応といえます。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」