天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「リードレス」が実現したペースメーカーは今後さらに進化する

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 しかし、いまの技術革新のスピードを考えれば、それほど時間がかからずに従来のペースメーカーと変わらないリードレスが開発されるでしょう。安全性がしっかり確保されれば、どんどんリードレスの流れが加速するのは間違いありません。

 さらに、その後も進化を続ければ、電池を交換する必要がないペースメーカーが登場する可能性もあります。ペースメーカーにチップを内蔵してクラウド化し、外から常に流される電波を利用して稼働させるのです。

 将来、そうした“ペースメーカーサービス”が現れてもおかしくありません。

■健康管理までできるようになる可能性も

 人体に流れている「生体電流」を利用して、電池そのものを必要としないペースメーカーが開発されることも考えられます。

 他にも、ペースメーカー本体のジェネレーター部分や内蔵チップにさまざまな生体情報を蓄積し、健康管理のチェック機能を持たせることができるようになる可能性もあります。毎日の歩行距離、血圧、血糖値などを自動的にチェックできるようになれば、患者さんをより良い状態で管理できるようになります。

 そうなれば、ペースメーカーを埋め込んでいる人の方が、むしろ長生きできるようになるのではないかとさえ思えます。いつか、そんな時代がやってくるかもしれません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。