Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【注目の裁判】 つらい痛みは我慢しないほうが延命する

術後の痛みも積極的にケア(C)日刊ゲンダイ

 結論からいうと、がんの痛みは積極的に改善した方が、患者さんの生活の質がよくなることが分かっています。適切な痛みの治療を受ければ、治療を受ける前よりよく眠れるようになり、食事ももっと取れるように。出歩くことがおっくうでなくなり、行動が前向きになるため、性格も明るくなります。激痛で知られる末期のすい臓がん患者さんを対象とした無作為比較試験で、有効性が証明されているのです。

 がんの痛みというと、末期をイメージする方が多いでしょう。確かに末期の痛みはつらく、骨に転移したりすると、安静にしていてもひどい。がんが神経を圧迫すると、痛みに加え、痺れも重なって、不安が助長されます。そんな末期の痛みはもちろんですが、痛みの治療は診断されたときから受けた方がいい。時期を問いません。

■診断時から緩和ケア 

 がんの症状を緩和する治療を緩和ケアといいます。痛みの解消のほか、心のケアもそのひとつ。肺がん患者さんを対象とした試験では、心のケアを受けたグループは受けていないグループに比べて、約3カ月の延命効果があり、抗がん剤の使用量は少なくて済むというデータもあります。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。