Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【注目の裁判】 つらい痛みは我慢しないほうが延命する

術後の痛みも積極的にケア(C)日刊ゲンダイ

 もうひとつ、誤解を解きましょう。がんの痛みの治療に使われるのは、モルヒネに代表される医療用麻薬です。医療用とはいえ、麻薬とあることから、中毒性を心配されますが、処方通りに使用する限り、その心配はありません。日本の医療用麻薬使用率は、米国の27分の1。末期には、9割の方が痛みで苦しみますから、もっと使われるべきでしょう。

■まずは飲み薬で

 緩和ケアでは、まず飲み薬で痛みを軽減。必要に応じて放射線でがんを小さくしたり、圧迫される神経を局所麻酔でブロックしたりする治療を加えます。神経ブロックは進行がんだけでなく、肺がんや食道がん、乳がんなどの術後にも効果的です。

 日本人は痛みを我慢しがちですが、がんの痛みは我慢しなくていい。それが、この裁判の教訓です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。