健康は住まいがつくる

予病住宅<1> 人は1日に浴槽700~800杯分の空気を吸っている

湿気や空気を通す“呼吸をする素材”を使った家
湿気や空気を通す“呼吸をする素材”を使った家(提供写真)

 病気は住宅環境を変えることによって予防できるのではないか――。そんな考えからスタートした本連載だが、実際に住宅を建てている人たちはどう考えているのか。10年ほど前から「予病住宅」を造り続けている「ファミリア建設」(東京・東村山)の菊地英豊社長が言う。

「健康というと食べ物や飲み物ばかりが注目されますが、同じように体の中に直接入る空気への認識が低いのは問題です。人は1日に浴槽700~800杯分の空気を吸っています。それも、化学物質がたくさん使われている建材に囲まれた室内の空気を吸っています。そこ
に病気の遠因が隠れていないか、考えるべきです」

 建築基準法では、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを発散する建材の使用制限を設けている。ただし、どの程度、ホルムアルデヒドを発散したらアレルギー症状などで健康を損ねるのかハッキリしておらず、その基準はあいまいだ。

「ほかにも、日本の建物には化学物質が多く使われている建材がある。しかし、こちらも“体に良くないが、この程度までなら大丈夫だろう”ということで許可されているようにも感じます。だったら、病気の原因になる可能性がある建材は使わないことです」

 同社が造っている「予病住宅」で使われる建材は、すべて自然素材。柱や梁などは自然乾燥させた調湿性に優れたスギやヒノキの無垢を使う。内装の壁には漆喰や石灰タイルを使用している。

「最近は、海底の植物性プランクトンの化石を原料にしている珪藻土の内装も自然素材で人気がありますが、実は固めるために樹脂を混ぜているケースが多い。自然素材を徹底するなら、石油性ののり剤を使わなくていいものを選ぶべきです」

 内装で大事なのは、湿気や空気を通す“呼吸をする素材”を使うことだという。同社はその特性を高めるために「在来真壁通気工法」という独自の工法を開発して取り入れている。

「この工法は、内壁の部分に室内の空気の通り道を設けたつくりになっています。それによって四角い木の柱の3面が空気に触れているので、木の持つ調湿性が格段とアップし木材自体の劣化も防げます。それに通気が良く空気のよどみがなくなるので、アレルギー疾患の原因となるダニやカビの発生も抑えられます」

 自然な建材を使った高断熱住宅は、万一火事が発生したときに、犠牲を最小限に抑える効果もあるという。

「火事の死因では逃げ遅れによる焼死や、心不全、呼吸不全と診断されてしまいますが、実際はビニールクロスや断熱材といった石油系建材による有毒ガスを吸うことで亡くなっているケースが非常に多い。健康を守る住宅は命を守る住宅でもあるのです」