背が縮むと死期早く 「50歳以上で2cm以上が危険」の根拠

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 背が縮んだら死期が早まる─―。「高齢になって身長が2センチ以上縮むと、死亡率が約2倍アップする」という産業医科大学の調査結果がある。骨粗鬆症学会役員で虎の門病院内分泌センター部長を務める竹内靖博医師と、循環器専門医で「井上医院」(水戸市)院長の井上幸一氏に、それぞれ詳しく聞いた。

 背が縮む原因は、大きく2つある。どちらも「背骨の異変」からくるものだ。そのまま放置すれば、体の衰弱を招き、最終的には死期を早めることになるという。

 1つ目は、背骨の湾曲が進んで姿勢が悪化するケースだ。

「加齢によって、骨や筋肉、関節の機能が低下すると体を支えることが難しくなり、背骨の湾曲が進みます。すると筋肉の萎縮が進んで、動くだけで疲労を感じ、動く意欲を失って、さらに筋肉が萎縮する。その悪循環の結果、体の新陳代謝は低下して内臓の代謝も落ち、食欲不振、栄養不足になってしまいます。体は急速に衰弱して免疫力や抵抗力も下がり、健康体ではかからないような病気になる場合もある。中でも、高齢者の死因第1位の肺炎になってしまう人が多い」(井上院長)

 姿勢の悪化による身長の縮みは1~2センチ程度だという。ほんの少しの異変だが、体が衰弱し始めている可能性が高く、さまざまな病気に注意する必要がある。

 2つ目は背骨を形成する椎体(ブロック状の骨)が、圧迫骨折などによって潰れているケースだ。

「背骨の圧迫骨折は、椎体が丸ごと潰れても半数以上の人は大きな痛みを感じません。個人差もありますが、背骨が少し痛む程度です。椎体骨折には、ブロックの一部が潰れる程度のグレード1から、丸ごと1つ潰れてしまうグレード3まであります。気づかないうちにグレード3の椎体骨折が起きて、3~4センチも背が縮んでいたなんてケースもあります」(竹内センター部長)

■男性は50歳ごろから骨の強度が弱くなっていく

 椎体骨折を放置すると、他の椎体にも負荷がかかり、連鎖的に椎体が2個も3個も潰れてしまう例もあるという。

「2センチ以上の身長の縮みは、椎体骨折の可能性が高く、骨粗鬆症によって骨が弱っている証拠です。つまり、全身の骨がいつ骨折してもおかしくないという状態です。骨粗鬆症であることに気づかずに転んで尻もちをついたり、重いものを持ったりして、大腿骨近位部骨折(足の付け根の関節の骨折)が起これば、介護が必要になる可能性が高くなる。骨折後、すぐに手術とリハビリをしても、高齢者の場合は歩きづらくなったり、寝たきりになる可能性が非常に高くなってしまうのです」(竹内センター部長)

 もし、寝たきりになってしまえば、運動量や食事量が低下するなどして、やはり体がどんどん衰弱していく。多くの場合、介護を必要とするようになってから、約2~3年で寿命を迎えてしまうという。骨折が介護につながり、結果的に死期を早めてしまうのだ。

 男性は50歳ごろから骨の強度が少しずつ弱くなっていくので、喫煙、飲酒、食生活などの生活習慣を改めて見直したい。もし、背が縮んでいることが分かったら、大きな骨折や病気につながらないうちに改善策を講じたほうがいい。

 姿勢の悪化による背の縮みには、栄養補給や運動を心がける。椎体骨折の場合は、医師のもとで骨粗鬆症の適切な治療を受ける必要がある。低下した骨密度は、ビタミン製剤やホルモン製剤などの治療薬によって補うこともできる。

 40代の頃より2センチ以上縮んだ女性は、介護が必要になるリスクが2倍高くなるという厚労省の報告もある。50歳を越えたら、身長のチェックを怠らないようにしたい。

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