有名病院 この診療科のイチ押し治療

【周産期医療】聖母病院・産婦人科(東京都新宿区)

聖母病院・産婦人科の樋口泰彦部長(左)
聖母病院・産婦人科の樋口泰彦部長(左)/(C)日刊ゲンダイ

 産婦人科医療は、「生殖」「周産期」「腫瘍」「女性のヘルスケア」の4本柱からなる。同科が最も力を入れているのが「周産期」だ。

 1931(昭和6)年の病院創設の翌年に同科が開設されて以来、これまで13万人以上の赤ちゃんが誕生している。少子化のいまでも年間1600件前後の分娩数は、東京都内のトップ3に入る。同科の樋口泰彦部長が言う。

「当院を利用される妊婦さんは、近隣地域に居住、もしくは実家がある方が中心になりますが、歴史があるので3世代、4世代にわたり当院で出産されているご家族がとても多い。ほとんどが地域の評判、口コミでの来院です」

 最重症の妊娠高血圧症候群や合併症妊娠などの「重度ハイリスク妊婦」は、母子・胎児集中治療室などが整備された周産期母子医療センターが担う。それ以外の妊婦は、大小さまざまな産科施設で出産しているが、総合病院である同院は、緊急帝王切開にも365日24時間体制で対応しており、中程度のハイリスクの妊婦も診られる中間的施設だ。大学病院のように施設が大き過ぎない分、小回りの利く、手厚いケアができるという。

「大きな病院では、担当医が入れ替わったり、複数の医師が担当することが多いのですが、当科では妊婦さんに安心してもらえるように“完全主治医制”にしています。これだけ多くの分娩数がある病院としては珍しいと思います」

 助産師の数が多く「周産期クラス」(予約制で有料)が充実しているのも人気の理由だ。妊娠の前期では、妊娠中の食事や生活、異常の見方と対応、母乳、体操などを学ぶ。後期では、お産の準備と経過について指導してくれる。退院後のベビーマッサージ、産後体操クラスなども用意されている。

「助産師外来では、健診と保健指導をします。第1子や前回のお産で他院で苦労した妊婦さんなどは不安が強いので、保健指導では30分の時間を取り、2人の助産師がついて質問や相談に応じ、アドバイスをしています。最近は『産後うつ』になる方も多いので、助産師は退院後の訪問サポートも行っています」

 妊娠35~36週になると「バースプラン(面談)」で、どういう出産をしたいか妊婦の要望を聞く。

 同科は基本的に自然分娩、母乳哺育を推進しているが、希望者には「和痛分娩」や「フリースタイル出産」も積極的に取り入れている。

 和痛分娩とは、陣痛や出産時の痛みをやわらげる分娩で、同科では腰にカテーテル(管)を留置して麻酔薬を注入する硬膜外和痛分娩を行っている。フリースタイル出産は、分娩台は使わず、妊婦が自分にとって楽な姿勢で出産する。和痛分娩は全体の2割、フリースタイル出産は3~4割の妊婦が希望するという。

 同院の分娩費用の目安は、正常分娩(4人部屋、6日間入院)で61万5000円。和痛分娩では約10万円の加算になる。

■データ
マリアの宣教者フランシスコ修道会が1931年に開院。本館が東京都選定歴史的建造物に選定。
◆スタッフ数=常勤医7人(非常勤10人)、助産師65人、看護師3人
◆年間初診患者数(2015年)=産科2472人
◆年間分娩数(同)=1638人