身近な薬の落とし穴

湿布薬を貼ったまま日光を浴びると何が起こるか?

湿布薬にも副作用がある
湿布薬にも副作用がある(C)日刊ゲンダイ

 現代では、薬をインターネットやドラッグストアで簡単に購入することができます。それだけ手軽で身近になったといえますが、使い方によっては思いもよらぬ副作用が起こる薬がたくさんあります。

 今回は、肩凝りや関節痛などに使用する「湿布薬」を取り上げましょう。

 湿布薬のほとんどは、痛みを和らげる解熱鎮痛の成分が配合されています。湿布薬を患部に貼り付けると、解熱鎮痛成分が皮膚から吸収され、痛み止めとしての効果を発揮するのです。このとき、解熱鎮痛成分は皮膚の近くにとどまっていますが、そこに日光などの強い光が当たると「光線過敏症」という副作用が起こる危険があります。

 光線過敏症は、紫外線の強い夏場に多い副作用です。強いかゆみを伴う発疹・発赤、腫れ、刺激感、水疱・ただれなどの激しい皮膚炎症状や色素沈着が起こり、これらの症状が全身に広がることもあります。

 特に「ケトプロフェン」が配合されている湿布薬は光線過敏症が起こりやすいため、使用する際は日光を当てないようにサポーターなどを身に着けて遮光する必要があります。しかも、ケトプロフェンは湿布薬を剥がした後も皮膚に存在している可能性があるので、少なくとも約4週間は貼った部分に日光を当てないようにする必要があります。ケトプロフェンは、「モーラステープ」といった医療用医薬品の名称でも頻繁に使用されているので注意しましょう。

 実際に、モーラステープを手首に貼った患者さんが光線過敏症になった事例があります。手首は赤く腫れ、痛みとかゆみにお困りで、患者さんは「たかが湿布と思って使ったけど、湿布も薬なんだね……」とおっしゃっていました。

 また、湿布薬に含まれる解熱鎮痛成分は、皮膚から吸収されて全身に作用することもあるため、解熱鎮痛剤によって悪化するアスピリン喘息の方や、妊娠後期の女性は使ってはいけません。

「ただ貼り付けるだけ」と思われがちの湿布薬にも、さまざまな副作用があるのです。

中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。